レーシングホイール開発・3章_今回は、スキュアー編です。
最初に_
レーシングホイールの開発に着手した当初は、スキュアーは既製品を採用する予定でした。
この間、我々メーカーの知識を超えた豊富なノウハウと高い技術力を持ったPROショップ様がストライダーの特性に合わせた様々なパーツの開発・提案をされています。
中でも、ランニングバイクならではの提案:かかとあたり対策としてのスキュアーエンドパーツのスリム化は、安全面から見ても理にかなった提案であると脱帽の想いでした。
正直なところこれらの提案がなかったらスキュアーの開発は行っていなかっただろうと思います。
先駆者様には、敬意とともに安全対策=ユーザーありきの商品開発として、当ブランドでも方向性にならわせていただきましたことをご理解いただけますようお願いいたします。
LABレポート>NEWホイール〈レーシングホイール開発-3章:スキュアー編-〉
今回のレーシングホイールの開発の中でもスキュアーの開発は、一番苦労した部分。
すでに警鐘されている、スキュアーエンドパーツへの「かかとあたり」によるケガ対策としてのスリム化の必要性。
いかにエンドパーツをスリムにするか?
レーシングホイールの開発期間でも、直近の約半間は、ほぼスキュアーの開発に費やす程、何度となく図面を描き、試作を作るといった繰り返しだった。
開発初期
従来、スキュアーで採用されているM5_六角穴付ボルト規格品を採用する事を前提とし、前編で上げたハブ(NOVATEC A291SB)のダストカップエンド形状と部位に関連してくるタブワッシャー等とストライダー車体の関係を図面化するところからスタート。
スキュアーエンドパーツの凸寸の限界値を10mm以下にすることは、必然的に不可能であることは、図面を見て一目瞭然。この時点では、これ以上は無理と判断。ケガ防止のためにエッジ部分を出来るだけ丸くして試作することに_
試作パーツがあがってきて、実車に装着_
「なんか、ボテっとして、スリムさに欠ける・・・・・」
満足できず、再検討へ_
開発中期
「どうしたら、もっとスリムに出来るだろう?」
何度となく図面を書き直しても、厚さはそれほど変わらない。
もはや既成概念を見直さないとスリム化の方法はない。
「タブワッシャーの約1.8mmって悔し~」
「ん? タブワッシャーをエンドパーツ内に格納しちゃえば?」
そう思いつき、取付の際にタブワッシャーにガタつきがでない=タブワッシャー厚マイナスαの落とし込み形状をエンドパーツに反映してみることに_
同時にハブのダストカップ側の先端凸寸も若干調整して、結果、10mm以下の8.25mmのスリム化に成功!!
これでパーフェクト!! と思い、早速試作依頼。
試作パーツがあがってきて、実車に装着_
「いいじゃん、いいじゃん!!」
これで量産決定!! スキュアーの開発は終了!!
と思いきや・・・・・何日もずっと試作品を見ていると見慣れてきたせいもあるのか、
「もっと、スリムにならないかな~」と欲が出てきた。
と言う訳でもう一度、ブラッシュアップを試みることに_。
開発後期〈量産最終型〉
これまでの、図面を再チェック!!
「この規格ボルトの頭がデカイんだよな~他の代用品ないのかな?」
特注製作も視野に入れネジメーカー数社に打診。
あらゆるボルトをサンプルで取り寄せ、なんだかんだと試行錯誤。
「これ、いけそう!!」
目をつけたのは、皿キャップタイプのボルト。
皿キャップボルトの規格品を加工して採用する案で更なるスリム化が出来そうな感じ。
図面反映→結果、更にマイナス1.8mmのスリム化に成功!!(凸寸:6.45mm)
再度、試作依頼。
あがってきた試作パーツを見て_
「良~し!! やりきった!!」
大満足で今度こそ量産決定!!
左〈試作初期〉
●規格M5_六角穴付ボルト適応仕様
●厚さ:9.75mm(装着時凸寸:11.55mm)
※実車装着時は、タブワッシャー(約1.8mm厚)を挟むため、実車に対する凸寸は、約11.55mm
中央〈試作中期〉
●規格M5_六角穴付ボルト適応仕様
●厚さ:8.25mm
※タブワッシャー格納形状
右〈開発後期(最終量産型)〉
採用ボルトを皿キャップタイプに変更し、更にスリム化
●M5_六角皿ボルト(加工)適応仕様
●厚さ:6.45mm
※タブワッシャー格納形状
【最終量産型】
ポイントは、タブワッシャーの厚みを格納する形状としたことに加え、皿キャップタイプのボルトを採用したことによりボルトキャップ側パーツ厚:6.45mm、エンド側パーツ厚:6.35mm のスリム化を実現。
【実車装着時】
スリム化のために、M5_六角皿キャップタイプのボルトを採用(3mm棒レンチ対応)
スリム化に伴うネジ機能の有効寸が少なくなることによる脱輪対策としてもタブワッシャー格納形状の場合、タブワッシャーが、エンドパーツ自体の緩みに対するストッパー的役割をはたす。
量産品は、アクセサリーパーツ的な要素も加えてアルマイトカラー仕上げ。
このスキュアーは、レーシングホイールに標準装備で発売予定。
スキュアー単品での発売も予定しています。
さぁ~次回は、レーシングホイールの全貌が!!
〈レーシングホイール開発-最終章-〉に続く